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写真を撮る側、撮られる側

肖像権とは、写真や動画の被写体となる人に認められる権利です(*)。以下の2つに分けることができます。
(1)「撮影拒絶権」:撮影されない権利
(2)「利用拒絶権」:撮影された写真等を利用されない権利
*イラストやフィギュアなどのモデルにも認められる。

写真の著作権と密接に関係していることから、しばしば著作権法と併せて扱われますが、肖像権は著作権法で規定されているわけではありません。肖像権は、憲法第13条に基づく「人格的利益」のひとつと考えられています。1969年、「京都府学連事件」の最高裁判決で「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」とされ、これ以降の裁判で判例が蓄積されてきました。それらが肖像権に関する定義や中身の判断材料となっています。

人物を被写体として撮影すれば、自ずと肖像権の問題が生じます。これは撮影された側の権利です。一方で、写真の著作権は撮影者に帰属します。これは撮影した側の権利です。つまり、1枚の写真をめぐって、被写体の「人格的利益」と撮影者の「表現の自由」がぶつかり合うことになります。

また、肖像を利用するには、著作権と肖像権の権利処理を別々に行わなければなりません。それは、被写体となった人が反対をすれば、たとえ著作権者が許諾したとしても、その写真の公表等ができないことを意味します。著作権にとっては、事実上の“制約”となります。そう考えると、肖像権というのは、明文の規定がないにも関わらず、実に強い権利であることがわかります。

今や、「肖像権」という言葉は広く知られています。ただ、間違った法解釈や行き過ぎた権利意識から、混乱が生じていると耳にします。その結果、撮影をする側は、必要以上にリスクをおそれ、人物を被写体とする写真の撮影を避けるようになっているといいます。いわゆる「委縮効果」です。このままでは、写真による表現の幅が狭くなることにもなりかねません。

SNS全盛の時代であり、スマホやデジカメの普及率も高い今日、誰しも撮影する側になることもあれば、撮影される側になることもあります。撮影者の権利か、被写体の権利か、どちらか一方のことだけを考えればいいというわけにはいきません。

 

(Blau=Baum)

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