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「ムーンショット目標」とアバターの権利 ―その1―

「ムーンショット目標」とは「将来の社会課題を解決するため」として、内閣府が社会、環境、経済の3領域から決定した9つの具体的目標のことです。VR、AR、MR、SR、ブロックチェーン、AI、GANなど、現代の先駆的テクノロジーを駆使していった先に何があるのか、何ができるようになるのかを想定しているのだろうと思われます。中でも「目標1:身体、脳、空間、時間の制約からの解放」に注目が集まっているようです。SFさながらのこの目標は、漫画「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」でいうところの「電脳化」や「義体化」、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の「シビュラシステム」を思い起こさせます。また、「目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータ」にも着目したいところです。こちらは漫画「ヨルムンガンド」を彷彿とさせます。量子コンピュータが実用化の域に達すると、これまで常識としてきた「ルール」や「システム」が一変するかもしれません。例えばメタバースは、量子コンピュータと融合することで飛躍的な発展を遂げると言われています。

内閣府のこうした目標設定を受けて、文化庁でも2022年1月にWG(ワーキンググループ)が発足され、”仮想空間の理解と取り組み”を進めているようです。WG参考資料ではメタバースを含む仮想空間を「①物理制約を無視できる、②性別・容姿・社会的立場等から解放され、③国籍や言語の壁を越えやすく、④現実の創作活動とはルールの違う新たな創作活動の現場となっており、そうした場で活動するのは、比較的若い世代が多い。」ものと位置づけています。また、3月29日付報告書には「仮想空間は、デジタル化が進む社会における新たな生活空間として確立する可能性があり、今後の文化芸術活動における主要な表現の場となることが見込まれる。」との記載があります。

 著作権に関係するところとしては、「NFTに関する留意点」が指摘されています。


NFTに関する留意点

1.デジタルコンテンツの”所有権”を実現するものではない。

2.いわゆる”コンテンツ保護技術”ではない。

3.制作者の”著作権”を保護するものではない。

4.偽物を見抜き、”本物”を証明するものではない。

5.いわゆる”メタバース”の必要条件ではない。


「日本の法律でも定義されておらず、制度整備されていない中で、世界的に遅れをとっている。」(3月29日付報告書)との指摘もあります。

 一方、NFTに期待できることとして、以下を掲げています。


文化芸術振興におけるNFTの意義

①NFTを用いた表現活動に形成される新たな価値体系

②グローバル展開におけるファンコミュニティ形成のための手段

③クリエイターやアーティストが、自身の作品販売や二次流通を通じて、直接収益還元を得られるスキームの実現

④デジタルコンテンツも含む芸術作品の来歴情報等の蓄積


著作権に関係するところに若干の説明を加えてみます。 「3.制作者の”著作権”を保護するものではない。」とはどういうことかと言うと、「無断利用されない保証はない」ということです。仮に、自分の作品が無断で利用された場合、現実世界と同じく権利を主張しないことには救済されることもありません。これは「偽物」が仮想空間においても流通し得るということであり、すでに相当数が流通しているとも言われています。つまり、「4.偽物を見抜き、”本物”を証明するものではない。」ということです。著作者または著作権者の許諾を得てNFT化されている作品なのか、適法・適正に流通している作品なのか、NFTの技術ではわからないということです。

 たしかに「④デジタルコンテンツも含む芸術作品の来歴情報等の蓄積」によって、真正性を証明し得るとの期待もあります。ただ、そのために重要なのは「鑑定」だと言えそうです。最初にNFT化されたときに、それが間違いなく「本物」であることが証明され、その「鑑定」が信用に足るものであれば、「改変されない」というブロックチェーン技術の特質が有効と考えられます。実際、WGにおいても「公的な鑑定評価制度の検討について」議論がなされています。この「鑑定評価制度」については、別の機会に考察してみたいと考えています。

(つづく)

(Blau=Baum)

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