「改変」って、何のこと?

著作権処理などの実務に関わるとしばしば「改変」という言葉を耳にします。この「改変」が何を意味するのか、話の内容などから阿吽の呼吸で理解することが求められます。実務で「改変」と言われた場合、著作権法の条文のうち、以下のどちらかまたは両方を指していることがあります[i]。20条と27条の区別がつかないまま、「改変」を独自に解釈してしまうとトラブルのもとになります。きちんと把握するようにしましょう。

  • 第20条:同一性保持権
  • 第27条:翻案権

(1)著作者人格権と著作財産権

20条:同一性保持権は著作者人格権のひとつ、27条:翻案権は著作財産権のひとつで、別々に規定されている権利です。

著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権の三つがあります。著作物は人の思想または感情を表現したものであって、著作者の人格の発露であると考えられます。言うなれば、著作者の人格と直結するものです。それを他人がかってに取り扱っては、その著作者の人格権を侵害することになりかねません。そこで、著作者の人格権を保護するために認められている権利、それが「著作者人格権」です。

また、著作物を公表すると、様々な方法で利用されることになります。中には、著作権者の利益を損なうような、思わぬ方法で利用されることもあるかもしれません。そのようなことがないように、その著作物を特定の者にだけ利用させるのか、どのような媒体で利用させるのか、利用させる期間はどれくらいか等、その流通をコントロールすることが必要になります。そのコントロールをするために認められている権利が「著作財産権」だと言えます。

(2)同一性保持権と翻案権

同一性保持権は、著作者が「その意に反して・・・変更、切除その他の改変を受けない」権利のことで、譲渡・相続の対象となりません。また、公訴代理人を除いては、代理行使も認められないと考えられています。

翻案権は、「翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する」権利のことで、譲渡・相続の対象となります。委任することも可能です。

(3)”改変”=「変更を加える」

同一性保持権については、“些細な改変”も侵害となる可能性があります。「法政大学懸賞論文事件」(東京高裁平成3年12月19日判決)では、読点の使い方、中黒の読点への変更なども同一性保持権の侵害に当たるとされました。昭和45年の立法過程において、著作権者側から同一性保持権の適用除外(現行著作権法第20条2項4号)について強い反対を受けたため、裁判において厳格に解釈されることになったとも言われています。近年、厳格適用説(厳格に解釈すること)は再検討の必要があるとされています。

翻案とは「具体的表現に修正、増減、変更等を加え、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより・・・別の著作物を創作する行為」のことです。創作性の付加のない“軽微な改変”の場合は翻案権ではなく、複製権の問題となります。読点の使い方、中黒の読点への変更は、翻案とは言えないでしょう。

実務では、既存の著作物に「変更を加える」こと全般を「改変」と言っているのです。しかし、それは著作権法において別々に規定されている権利をひとまとめにした言い方であり、正確性に欠けるものです。「改変」と言われたときには、20条と27条のことをきちんと頭に思い浮かべながら話を聞くことが必要です。


[i]著作権法の中で「改変」という語が使われているのは以下の条文です。

◆第20条:同一性保持権

◆第30条第1項2号:技術的保護手段の回避

◆第90条の3:(実演家の)同一性保持権

◆第113条第4項2号:侵害とみなす行為

 

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