著作権とは?

1.著作権の行使

著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができます。一方、許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができます。例えば、「コピーは100部未満なら可能」、「雑誌での掲載のみ可能」、「ネット配信は不可」、「文庫本での出版のみ可能」などといった利用方法及び使用にあたっての使用料金、地域、期間などの条件は、著作権者が提示することができます。

2.人格的権利と財産的権利

著作権法は、著作物となる作品を創作した人の権利(「著作者の権利」)を定めた法律です。そして、その権利のことを著作権(「広義の著作権」)と呼んでいるわけですが、それは二つの権利をあわせたものです。一つを、人格的な利益を守る「著作者人格権」、もう一つを、財産的な利益を守る「著作財産権」(「狭義の著作権」)と言います(*1)。

(*1)「狭義の著作権」:本来、「著作権」と言えば「著作財産権」のことを言う。しかし、著作者人格権と著作財産権とをあわせて「著作権」ということもあるので、その区別をするために「広義の著作権」、「狭義の著作権」といった使い分けをしている。

「著作者人格権」

著作物は人の思想または感情を表現したものであって、著作者の人格の発露であると考えられます。言うなれば、著作者の人格と直結するものです。それを他人がかってに取り扱っては、その著作者の人格を侵害することになりかねません。そこで、著作者の人格を保護するために認められている権利が、「著作者人格権」ということです。
「著作者人格権」は、著作者の人格を保護するための権利ですので、他人に譲り渡すことはできません。相続の対象ともなりません。「著作財産権」を他人に譲渡したとしても、「著作者人格権」は著作者に残ったままとなります。
また、以下に掲げる3つの権利を侵害する以外にも、「著作者の名誉又は声望を害する方法」で著作物を利用すると、著作者人格権を侵害する行為とみなされることがあります。

著作者人格権

公表権 自分の著作物を公表するかしないか。
公表するとすれば、いつ、どのような方法で公表するかを決定する権利。
氏名表示権 自分の著作物を公表するときに、自分の名前を表示するかしないか。
表示するとすれば、本名にするか、ペンネームなどにするかを決定する権利。
同一性保持権 自分の著作物の内容または題号を意に反してかってに改変されない権利。

 

「著作財産権」

著作物を公表すると、様々な方法で利用されることになります。中には、著作権者の利益を損なうような、思わぬ方法で利用されることもあるかもしれません。そのようなことがないように、その著作物を特定の者にだけ利用させるのか、どのような媒体で利用させるのか、利用させる期間はどれくらいか等、その流通をコントロールすることが必要になります。そのコントロールをするために認められている権利が「著作財産権」だと言えます。

著作財産権は、以下の11の権利によって構成されています。一口に「著作権」といっても、これら11の権利で構成される「権利の束」が著作権の正体です。そして、その一つ一つのことを「支分権」と言ったりします。利用者は、支分権ごとに許諾を得たり、使用料を支払ったりする必要があるわけです。他方、著作権者は、これらの一部だけの使用を許諾するまたは譲渡する、といったことも可能だということです。

複製権 印刷、写真、コピー、録音、録画などの方法で著作物を「有形的」に再製する権利。
上演権及び演奏権 音楽の演奏会や演劇の上演が典型例。著作物を多くの人に直接見せたり聴かせたりする権利。
上映権 映画、写真、絵画などの著作物を多くの人に対して、スクリーンやディスプレイで上映する権利。
公衆送信権・公の伝達権 ネット配信、テレビ、ラジオ、有線放送などによる情報の発信に関する権利(公衆送信権)。
公衆送信されている著作物を受信装置で受信して公に伝達する権利(公の伝達権)。
口述権 小説や詩といった言語の著作物を朗読などの方法により口頭で多くの人に伝える権利。
展示権 絵画や彫刻などの美術作品と未発行の写真の原作品を多くの人に展示する権利。
頒布権 映画、アニメ、ゲームなど映画の著作物についてだけ与えられている権利。それらの複製物を頒布(販売・貸与など)する権利。
譲渡権 映画以外の著作物の原作品又は複製物を他者に譲渡する権利。
貸与権 本、CD、DVDなど、著作物の複製物を多くの人に貸し出す権利。
翻訳権、翻案権等 著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、あるいはその他翻案をする権利。翻案とは、元のストーリーの本質的特徴を変えず、具体的な表現を変えることで新たな著作物(二次的著作物)を創るということ。
二次的著作物の利用権 原作者は、二次的著作物の作者と同じ権利を有する。
二次的著作物を利用するには、原作者の許諾が必要。そもそも、原作者の許諾なしに、二次的著作物を創ることはできない。

 

3.著作物とは

著作権法第2条第2項第1号には、
「著作物   思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」
と定義されています。著作物とは何か、おおまかに捉えることはできるでしょうが、もう少し説明が必要かもしれません。考え方として、何が著作物であるかを考えるより、何が著作物でないかを考える方がわかりやすいのではないかと思います。

「思想又は感情の表現」

「思想又は感情」とは、広く精神的活動全般を意味します。そして、「思想又は感情」は表現されていなければなりません。言葉、文字、音、色彩等によって、外部に表現されていることが必要です。従って、アイデアやコンセプトなどは頭の中にあるだけで表現されていないのであれば、著作物とはいえません。歴史の事実や単なる気象データなどは、「思想又は感情」の表現とは言えませんし、以下で言う「創作的に」表現されたものともいえませんので、著作物ではありません。

「創作的に」表現されたものであること

表現した人の「個性」、つまりオリジナリティが必要とされています。ただし、技能や技法が優れているかどうかは関係ありません。幼稚園児が描いた絵であっても著作物となりえるというのは、いつも聞くたとえ話です。他者の著作物を忠実に模倣(真似)した作品などには模倣した人の「個性」はなく、「創作的」ともいえませんから、著作物に当たらないとされています。他にも、防犯カメラの映像は創作性のない映像とされ、著作物ではないということになっています。

「文芸、芸術、美術または音楽の範囲に属するもの」

文芸、芸術、美術、音楽の分野に限定されるということではなく、広く知的・文化的範囲に含まれていれば著作物となりえるとされています。

 

著作物でないもの

アイデアやコンセプト
「表現」されていなければ、著作物とはならない。
他の作品から着想を得て、新たな作品を創った場合、どこまでが「アイデア」で、どこまでが「表現」なのか、その線引きは難しい。
事実やデータ
気象データの羅列などには、思想又は感情が含まれていない。統計資料を作成した場合には、思想又は感情が含まれるとして著作物となりえる。
また、「1867年 大政奉還」のような歴史的事実は著作物とはならない。しかし、歴史の事実を説明した文章は著作物となりえるし、年表を作成するなどした場合には、編集著作物となりえる。(*2)
発明
「自然法則を利用した技術的思想」は、特許法や実用新案法で保護される。
発明のような技術的アイデアは著作物とはならない。
実用品のデザイン
日用品などは、意匠法によって保護される。実用品における「工業上利用できる物品の形状」は、デザインと機能が結びついたものだとして、著作物と認められることはほとんどない。ただし、壺などの器、骨とうなどの美術工芸品は、著作物となりえる。
タイプフェイス
文字を著作物として、特定の者に独占させることはできない。ただし、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えるものについては著作物とされることもある。
例えば、「書」は美術の著作物とされる。
キャッチフレーズ
短い言葉は「創作的」とはいえない場合が多く、著作物とはならない。ただし、俳句や短歌などの場合、「創作的」であるとして著作物となる。
書籍の題号、楽曲の題名など
題号は、単に書籍の内容を示すに過ぎず、短い言葉で表記される。通常、著作物とはいえない。だが、某アイドルグループの楽曲タイトル「鈴懸の木の道で・・・」のような長いものであれば、著作物とされる可能性は否定できない。
プログラム言語、規約、アルゴリズム
著作権法第10条第3項において、著作権法の保護対象とならないとされている。
アルゴリズムとは、「プログラムにおけるコンピュータに対する指令の組み合わせの方法」のこと。コンピュータが行う処理の手順とも言える。
規約とは、「特定のプログラムにおける表現の特別の約束事」のこと。
なお、アルゴリズムや規約は特許法で保護される。
法令集等
(国や地方公共団体などが作成したもの)
詳細は、著作権法第13条参照。

(*2)「編集著作物」:単なるデータや事実でも、その要素の選択または配列に創作性があれば、著作物と認められる。百科事典、辞書などが典型例。なお、編集著作物のうち、コンピュータで検索可能なものは「データベースの著作物」と言われる。

 

著作物の例示(著作権法第10条第1項)

以下は、あくまで例示にすぎません。著作物の範囲を確定的に示したものではないということに留意してください。
近年、3Dプリンター、プロジェクションマッピング、VR、AR、MR、SR、GANなど、技術の飛躍的な進歩があります。それらによる制作物は著作物となりえるものですが、個別具体的な検討が必要になる場合もあると考えます。

小説、脚本、論文、講演その他言語の著作物(1号) 小説、脚本、作文、詩、俳句、レポート、論文、講演等
音楽の著作物(2号) 楽曲や楽曲を伴う歌詞等
舞踊または無言劇の著作物(3号) バレエ、ダンス、パントマイムなどの振り付け等
絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物(4号) 絵画、版画、彫刻、漫画、書道、茶碗や壷、刀剣などの美術工芸品等
建築の著作物(5号) 建物、庭園、橋など芸術的な建築物
地図または学術的な性質を有する図画、図表、模型その他の図形の著作者(6号) 地図、設計図、立体模型等
映画の著作物(7号) 劇場用の映画、アニメ、ゲームソフトの映像、ビデオなどの録画されている動画等
写真の著作物(8号) 写真、グラビア等
プログラムの著作物(9号) コンピュータのプログラム等

 

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