権利者のわからない著作物を使用する方法(裁定制度)

「裁定制度」とは

権利者がわからない写真やイラストなどの著作物はたくさんあります。こうした著作物を使用するには、どうすればよいのでしょうか。ひょっとすると、かってに使っても大丈夫と思っている方もいるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。たとえ権利者が見つからない場合でも、きちんと手続きをしたうえでなければ使用してはいけません。でも、権利者が見つからないのにどうしろというのか、と思われることでしょう。そこで用意されているのが「裁定制度」です。
権利者がわからないと言っても、「そもそも権利者が誰だかわからない」という場合だけでなく、「(権利者が誰か分かったとしても)権利者がどこにいるのかわからない」、「亡くなった権利者の相続人が誰でどこにいるのかわからない」など、いくつかのケースが考えられます。このような場合、権利者の許諾を得る代わりに文化庁に申請を行い、通常の使用料額に相当する補償金を供託することで、法律に適った使用をすることができるようになります。著作権法には、こうした制度が定められているのです。

 

どんな手続きが必要か

「裁定制度」には、よくある申請手続とは少し違うところがあります。申請をする前提として、「相当な努力」を払って権利者を探したけれど見つからなかった、ということが認められなければならないのです。権利者がわからないからといって、何でもかんでも申請してしまえばすぐに使用できるようになる、というわけではありません。
では、「相当な努力」とはどんなことでしょうか。もちろん、インターネットで検索することも「相当な努力」のひとつなのですが、それだけでは足りません。他にも、公益社団法人著作権情報センター(CRIC)のウェブサイトに7日間以上、権利者情報を求める広告を掲載すること等が必要になります。あくまで目安ですが、裁定が下りるまでには、通常でも2カ月くらいはかかると考えてよいでしょう。
以上のようなことから、この制度を利用するには、スケジュールをよくよく考えておかねばなりません。様々な作業を行ったにも関わらず、「相当な努力」の要件を満たしていない、書類に不備があったなどということがあると手続きは円滑に進みません。「裁定制度」を利用するには、事前の準備と確認が大事だということです。当会では、「裁定制度」の利用を検討中の方のご相談にも対応しております。

申請には、以下の費用が必要となります。
公益社団法人著作権情報センター(CRIC)のウェブサイト掲載料:¥8.100/件
文化庁への申請手数料:¥6.900/件(収入印紙)


事例紹介

(事例1)

「町の歴史」を紹介するためのパンフレットを制作することになった。町の名所旧跡の解説とともに、それらを写した古い写真も一緒に掲載することにした。ところが、いざ配布を開始したところ、権利者から「写真を無断で使用した」とのクレームが入ってしまった。結局、このパンフレットを配布することはできなくなり、回収のうえ廃棄することを余儀なくされた。

→このケースでは、古い写真の権利者をきちんと調べずに使用してしまったことが原因で起きたトラブルでした。実は、この写真は他のメディアでもしばしば使用されているものでした。「裁定制度」を利用するかしないかの問題以前に、きちんと権利者の調査をしていれば、避けることのできたトラブルであったと思われます。仮に、独自の調査では権利者が判明しなかったとしても、「裁定制度」を利用していれば、「相当な努力」の調査の過程で判明した可能性が高かったでしょう。

 

(事例2)

A社は、創業50周年を記念するテレビCMを流すことにした。そこで、創業当時のCMで使用されたという楽曲を起用したいと考えた。ところが、当時を知る社員はもう残っておらず、この楽曲の権利者が誰であるのかもわからなくなってしまっていた。そのため、この楽曲を適法に使うべく、「裁定制度」を利用することにした。

→「裁定制度」の典型的な利用方法といってよいでしょう。創業当時に自社のCMで使われていた楽曲だからといって、自社に権利があるということにはなりません。当時の事情がわからない以上、万全を期す必要があります。CMという性質上、万が一にも、権利侵害があったなどという事態に発展するようなことは避けなければなりません。「裁定制度」を利用することで、そうしたリスクを回避したということでしょう。

 

(事例3)

旅行代理店B社は、新しいパンフレットの制作に取り掛かった。通常、パンフレットの制作は関連会社C社に任せており、今回もいつも通りだった。ほどなくパンフレットは完成し、配布を始めたのだが、写真の権利者が現れ「無断使用だ」とクレームが入ってしまった。調査の結果、許諾を得ないまま掲載されている写真があることがわかった。事後的に、通常想定されるよりも高い使用料を支払うことで、権利者には納得してもらった。だが、パンフレットの配布については、時期を逸してしまった。
C社では、当該写真の使用について、許諾を得なくても大丈夫だろうと高を括っていた。また、「裁定制度」のことを知らなかった。

→パンフレットを制作したのがC社でも、実際にパンフレットを配布したB社が(法的責任の所在はともかくとして)「写真を無断で使用した」ということになってしまいます。原因はC社の認識不足にありますが、依頼者であるB社の側についても確認が足りなかったといえるでしょう。もし、「裁定制度」を利用していれば、「裁定制度」のルールに則って処理することが可能であったと考えられます。

 

 

 

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