著作権の保護期間

著作権の保護期間

著作物の利用を考える際には、その著作物が保護期間内のものなのか、パブリックドメイン(保護期間が切れた著作物)なのかを確認しなければなりません。ところが、それが一筋縄ではいかない場合があります。

著作権の保護期間は、原則として、著作者が著作物を創作したときから、著作者の死後70年(映画の著作物:公表後70年)までとなります。
保護期間の計算は、著作者の死亡の日にちからではなく、その日が属する年の翌年から起算します。要するに、翌年の1月1日から起算して、期間満了の年の12月31日に権利が消滅することになります。

それでは、「一筋縄ではいかない場合」とは、どんな場合のことかご紹介していきます。

 

●「共同著作物」

うちのお寺に仏像が寄贈された。この仏像は、地元の仏師Aの手によるものとされていたが、実際には有名な仏師Bと共同で制作したものだということが判明した。仏師Aは亡くなってすでに70年以上が経つ。しかし、仏師Bが亡くなったのは40年ほど前である。3Dプリンターを使って仏像のミニチュアを作り、販売したいと考えたが問題はないだろうか。

→一体の仏像を仏師Aと仏師Bの二人で彫った場合、その仏像は共同著作物となります。共同著作物とは、複数の人が共同で創作した著作物のことで、それぞれの人が創作した部分を分離して利用できないもののことをいいます。こうした著作物の場合、著作者のうち最後に亡くなった方の死後70年が保護期間となります。つまり、この仏像はまだ保護期間内ということになり、複製等をするには許諾が必要となります。

 

●「無名又は変名の著作物」

1947年に発行された自費出版の古いコミックを見つけた。当時の結婚式の様子をコミカルに描いたコメディ漫画であった。この一部を、我が社が出版する結婚情報誌に掲載したいと考えた。作者名は「近佐 馬亭」とあり、明らかにペンネームである。公表後70年以上経つこの作品について、利用許諾は必要なのだろうか。

→無名又は変名の著作物の保護期間は、著作者を特定できないため、例外的に公表後70年とされています。ただし、以下の場合、著作者の特定が可能となるので、原則通り、著作者の死後70年が保護期間となります。
1) 公表後70年の期間内に、著作権登録制度を利用して実名の登録をした場合
2) 公表後70年の期間内に、実名を付して改めて公表した場合
3) ペンネームであってもそれが周知の場合
そのため、上記コミックの場合も、ペンネームだからといってすぐに許諾は不要と判断することはできません。

 

●「写真の著作物」

初代社長の遺品の中から、古い写真が出てきた。この写真は、1956年10月に当社が移転したことを報じる地元の新聞に掲載されたものであった。写真には初代社長とともに、すでに引退をしたものの、初代社長の大学の後輩にあたり、大臣まで務めた地元出身の政治家の大学生当時の若かりし日の姿があった。この写真を我が社の歴史として紹介するために、当社のホームページにアップしたいと考えたが、問題はないだろうか。

→現在、写真の著作物の保護期間は、著作者の死後70年となっています。しかし、1956年当時の旧著作権法においては、写真の著作物の保護期間は発行後10年、また、未発行の場合には「種版を製作したるとき」から10年でした。
この写真は、1956年10月に「発行」されたものです。つまり、この写真の保護期間は1966年12月31日に満了しています。では、この写真は問題なくホームページに掲載できるかというと、そうはいきません。“初代社長の後輩”の肖像権の問題を忘れてはいけません。
なお、写真の著作物の保護期間については、旧著作権法において二度の延長措置があり、また、現行著作権法施行後の1997年、2018年には改正がありました。

 

●「団体名義の著作物」

1947年に催された町内会の祭りの様子を写した写真がある。この写真は、父が当時の町内会長に頼まれて撮影したもので、しばらくの期間、町内会の宣伝等に使われた。だが、父の氏名が表示されることはなく、町内会の名義で公表されていた。町内会長が代わってからは、この写真は使用されていない。
1980年頃、父は写真集を自費出版したのだが、この祭りの写真も掲載し、撮影者である父の氏名も表示した。写真集は、父の勤め先およびその関係者ならびに町内会のメンバーなどに、相当数が配られた。ところが最近、この写真が地元企業のホームページに無断で掲載されていることがわかった。事情を尋ねたところ、「団体名義で公表された著作物だから、著作権は切れている」と言われた。本当のところ、どうなのだろうか。

→著作者が法人等の団体であろうが、個人であろうが、団体名義で公表された著作物については、公表後70年が保護期間となります。未公表の場合、創作後70年となります。ただし、著作者が個人である場合、公表後70年までに、改めて実名で公表すれば、原則通り著作者の死後70年が保護期間となります。

 

●「映画の著作物」

ビデオカメラの歴史を紹介するための素材として、1953年の「大学サッカー大会」の決勝戦の映像を我が社のホームページに掲載したいと考えた。この映像は、出身大学の図書館に映像資料として所蔵されているもので、理工学部の故A名誉教授がまだ大学院生の頃に、ご自身の論文のために撮影したものだという。論文は、この映像とともに1953年に発表されている。なお、A名誉教授が亡くなったのは、1998年であった。
映画の著作物の場合、保護期間は公表後70年とされている。あと数年後には、パブリックドメインになるということだ。それまでの使用料ということであれば、会社の稟議は通るだろう。果たして、問題はないだろうか。

→現行著作権法は、映画の著作物の保護期間を公表後70年としています。現行著作権法に基づけば、1953年に公表された映画の著作物は、2023年12月31日に保護期間満了となります。しかし、1953年当時の旧著作権法においては、映画の著作物の保護期間は著作者の死後30年、1969年の延長措置により死後38年となりました。旧著作権法に基づけば、保護期間はA名誉教授の死後38年、つまり、2036年12月31日までとなります。
現行著作権法施行時の附則により、旧著作権法に基づく保護期間の計算による場合と現行著作権法に基づく場合とを比較して、保護期間の長いものの方が採用されることになっています。

 

●「逐次的刊行物」

私は、ペンネームを使って、マンガ週刊誌に連載を描いています。将来は、コミック(単行本)になることも決まっています。ペンネームを使うと保護期間は公表から70年ということですが、連載の場合、「公表」っていつのことを言うのですか?

→「一部分ずつを逐次公表して完成する著作物」のことを、「逐次的刊行物」といいます。要するに、一部分ずつを発表していって、最終回で完結する著作物のことです。連載漫画は、その典型とも言えます。この場合、「公表の時」は最終話のときです。つまり、作品が完結したときが「公表の時」となります。
ちなみに、継続すべき部分(次回作)が直近の公表から3年を経過しても公表されない場合、すでに公表されたもののうち最終部分を公表した時を基準として、保護期間の計算がなされます。
なお、逐次的刊行物であっても、実名または周知のペンネーム等で公表するものは、原則通り、著作者の死後70年を保護期間とするのは言うまでもありません。

 

●「継続的刊行物」

私は、ペンネームを使って、地元新聞に4コマ漫画を連載しています。特に、最終回があるというわけではありません。この場合、「公表」とは、いつのことを言うのですか?

→「冊・号又は回を追って公表する著作物」のことを、「継続的刊行物」といいます。例としては、一話完結タイプの連載小説やシリーズもののテレビドラマなどが挙げられます。全部の公表の終わる時期が通常予定されていないような著作物のことです。この場合、毎冊、毎号、毎回に公表される著作物が独立したものと見なされ、それぞれの「公表の時」を基準として保護期間が計算されます。

 

●「戦時加算」

「外国の著作物の場合、保護期間が延びることがある」と聞いたのですが、どういうことですか?

→「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」(戦時加算特例法)という法律があります。これは、サンフランシスコ平和条約の規定に基づく法律で、太平洋戦争開戦の1941年12月8日からサンフランシスコ平和条約の批准日の前日までを「戦争期間」とし、その実日数を旧連合国の国民の著作権が保護されるべき期間として「通常の保護期間」に加算するというものです。通称「戦時加算」と呼ばれています。
代表的な例を挙げると、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアの国籍の人の著作物の保護期間には、最大で3794日が加算されます。もちろん、サンフランシスコ平和条約の批准日以降に創作された著作物には適用されません。それ以前に創作された著作物に適用されるものです。実務上、「著作権を取得した日」を特定することは難しい場合がほとんどで、その取扱いには注意が必要です。

以上のように、一口に「保護期間」と言っても、実務では様々な場面に遭遇します。判断に迷った場合にはご相談ください。

 

 

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